チリとスス

エアロゾルとバイオマスと環境について,考えたことをメモします。

エアロゾル感染

エアロゾルは専門ですが,感染は専門外です。お医者さんは感染が専門で,エアロゾルはたぶん専門外なんでしょう。

 

エアロゾルというマイナーな分野が表に出るのは,うれしいことでもあります。下記のとおり「空気感染」ですむところをわざわざ「エアロゾル感染」として広めたのは,どこかの学会の誰かが陰謀でもしたんじゃないかと思うくらいです。

 

自分の認識では「空気感染」と「エアロゾル感染」は同じです。というか「エアロゾル」という言葉を知っているのならそれを使うべきで「空気感染」という言葉が不正確ですが,ふつう「空気感染」しか聞かないですね。「空気」の組成について話をするとき,その中に浮いているチリとススのことは考えないでしょう。今のところ細菌やウイルスは気体ではないから,ただの空気で何かが感染することもありません。つまり「空気感染」とはもともと「エアロゾル感染」を指していると考えるのが妥当と思います。

 

呼気に含まれる粒子,チリやススや細菌やウイルスは,重力に引かれて下に落ちますが,その速度は密度と大きさによって違っており「終末沈降速度」という名前で検索すれば,ざっくりと計算することができることがわかります。いわゆる飛沫はでかいので,目に見える速度で落ちますが,飛沫が乾けばより小さな粒子になり,落ちる速度が遅くなり,長い間空気中を漂うことになるのはPM2.5と同じです。細菌の大部分は乾燥にあまり強くないので「飛沫感染するが空気感染しない」と言われます。結核菌は乾燥に強い細菌だったので空気感染するとされたのですね。ウイルスについて,はっきりした情報がありませんが「乾燥には強ければ空気感染する」ことになります。

 

そして,いわゆる普通のマスクは,それがどんな素晴らしいろ材を使っていたとしても,横からダダ漏れしています。マスクの付け方にもよりますけど,半分くらいは漏れているんじゃないかな。いわゆる防じんマスクは,ろ材の性能はたいして変わりませんが,漏れを極力防ぐような形をしています。もっとも,N95マスクだろうと上手につけなければ,また顔の形と合っていなければ,漏れることに変わりはありません。漏れを一般の方が測定できる手段があるとよいのですが,なかなかありません。ろ材の性能より漏れのほうがはるかに大きな影響を持つので,フィルタの目をどうこう論じるのは無意味です。飛沫はほぼまっすぐ飛び,まっすぐ落ちますので漏れの影響は小さいですが,乾燥した粒子は,だだ漏れです。

 

ウイルスを一粒吸ったら必ず感染するというものでもないでしょうから,半分でも取れないよりはマシです。加湿はのどの粘膜を保護し,ウイルスに効果があるようですから,除去性能が低くても効果は期待できると考えます。