チリとスス

エアロゾルとバイオマスと環境について,考えたことをメモします。

サイクロン掃除機

 昔,サイクロン掃除機が欲しくて,ひとつ入手したことがあります。サイクロンとは名ばかりの大きな筒にフィルターがついているだけのカップで,フィルターは頻繁に目詰りし,吸引力はすぐに落ち,高いだけでした。三年ほど我慢してから,紙パック掃除機にしました。紙パックのほうが安いし吸引力も強いし,捨てるのも楽です。

 しかし,サイクロンはかつて大気汚染を技術的に乗り越える際に大きな役割を果たし,今でもいろんな工場で使われている集塵装置の代表的な形式のひとつで,きちんと設計すればそんなに性能の低い技術ではありません。円周に沿って導入した気流を旋回させ,中のチリは遠心力で壁面に接触した後に重力ですべり落ちる,実によくできたアイデアです。小さなチリは遠心力が小さくなるため,旋回流の半径を小さくし,気流の速度を大きくするため,小さなサイクロンを並列にしたマルチサイクロンという形にする必要があり,ダイソンの掃除機はマルチサイクロンを素直に製品にしたものです。

 あれから十年以上が経ち,思うところがあって,家電量販店でサイクロン掃除機について調べてきました。いまは東芝の高級機種もマルチサイクロンを使っているようですが,それ以外の「すべてのサイクロン掃除機」はでかいカップにでかいプリーツ(屏風折り)フィルターをつけたサイクロンとは呼べない製品でした。でかいサイクロンの底には大きなゴミだけがたまり,フィルターにはサイクロンで取れない細かいホコリが詰まりやすくなるので,フィルターの使い方としてもよくありませんし,サイクロンのゴミ捨てとフィルターの掃除の両方をしなければならないのは非効率的。紙パック単独のほうがはるかに手入れが楽です。
 空気清浄機といい,掃除機といい,どうも日本の家電製品は小手先の便利さでごまかしている印象が強いです。(空気清浄機については,また今度調べます)東芝のマルチサイクロン掃除機「バーティカルトルネード」と,実質ただのカップでしかない「デュアルトルネード」は,ほとんど同じ見た目なのに,中身はまったく別物です。わかってないお客さんは「同じトルネードならデュアルが安い」と考えて買い,その後気づくでしょう。そんな売り方でいいのでしょうか。

 東芝の上級機種は,ダイソンの真似をしつつダイソンを安くて高性能のものを作った。新しいものは生み出せていませんが,日本メーカーの態度としては正しいと思います。他の方向性としては,ハイブリッドで勝てないマツダディーゼルで攻めたように,「すごい紙パック掃除機」とかでしょうか。もっとがんばって欲しいです。